あなたは突然水族館を経営することになった。
水族館に行った回数は片手で数えるほどしかなく、専門知識もない。
水槽によく知らない魚を入れてみたが、なぜか苦しんでいるようだ。
水質と温度があわないのか?水槽に機械をつけてみると気持ち良さそうに泳ぎはじめた。
その様子を見ているとなんだかかわいい。
『メガクアリウム』は数あるシミュレーションゲームのなかでも珍しい《水族館経営シミュレーションゲーム》だ。
ビジュアルやゲーム性は過去にエレクトロニック・アーツからリリースされた『テーマアクアリウム』に近く、ファーストインプレッションは気軽な印象を受ける。
しかし、手に取ったが最後、水族館経営の深みにハマっていってしまう。
この記事ではPS4版『メガクアリウム』のレビューをお届けする。
ジャンル | 水族館経営シミュレーション |
発売元 | コーラス・ワールドワイド |
開発元 | Twice Circled Auroch Digital |
プラットフォーム (ストアリンク) | Nintendo Switch PlayStation 4 XBOX One PC (Steam) |
発売日 | Switch:2019年12月12日 PS4: 2019年12月12日 XBOX:2019年12月11日 Steam:2018年9月13日 |
価格 ※2021年7月23日時点 | Switch:3,040円(税込) PS4:3,040円(税込) XBOX:3,040円(税込) Steam:2,570円(税込) |
プレイ時間 | 30時間 |
- 水族館が好きな人
- かわいいビジュアルが好きな人
2種類のゲームモード
『メガクアリウム』には2種類のゲームモードがある。
- キャンペーンモード
- サンドボックスモード
キャンペーンモード
課せられた目標をクリアしていくモード。
シナリオをクリアすると1つずつアンロックされていき、最終的に10種類のシナリオが選べるようになる。
キャンペーン後半からは細かな目標が減り、最終目標だけが与えられるシナリオも多く《やらされている感》は少ない。
古い水族館の再建や個人コレクターの依頼、他業種の施設を再利用するなど様々な目標に向かって試行錯誤する過程では、敏腕水族館経営者の気分が味わえる。
サンドボックスモード
各種設定を自由に選んで水族館を造るモード。
一番低いランクからスタートしてじっくりと経営を楽しんだり、最初からすべてアンロックして自分が思い描いたとおりの水族館を造ることもできる。
フルカスタムでどのように設定すればよいか分からない場合は、資金無制限だが徐々にランクアップしていく《リサーチャー》やキャンペーンモードのような《スタンダード》など豊富なプリセットからの設定も可能だ。
私はサンドボックスモードでクレイジーな水族館を完成させてみた。
ライトなプレイ感
経営シミュレーション初心者にやさしい難易度
経営シミュレーションは人を選ぶジャンルで、コアゲーマーにあわせた難易度設定になっていることも多い。
その点『メガクアリウム』は難易度:標準でも特に苦戦することなくプレイできる。
難易度によって、経費の多さや生物の生命力などに違いはあるが、アンロックされるアイテムに変わりはない。
もし難しいと感じた場合は難易度変更も可能だ。
単純化された分かりやすい操作
各アイテムは生物、装飾品、用具、備品などジャンルごとにカテゴライズされており、分かりやすい。
生物には
- 活発で大きな水槽が必要な生物
- 臆病で攻撃的な生物
- 同種を複数飼育しなければいけない生物(群棲)
などそれぞれに特性があり、生物の種類やサイズによっては、同じ水槽に入れてしまうと捕食されてしまうこともある。
プレイヤーがこれらの特性を覚える必要はなく、生物を購入する画面などで確認ができる。
水槽、備品などのアイテム選択時も同様で、どのような効果を持っているのか表示されるため、難しい知識は必要ない。
アイテム設置時はスタッフが使用可能かどうかを緑で表示したり、正面に矢印を表示したりとパっと見で理解できるように作られている。
雇用するスタッフの仕事は5つしかなく、個人の特性にあわせて仕事を割り振れる(共感性が高いスタッフには給餌が向いているなど)
水族館という特殊なアミューズメント施設だけあって、プレイヤー側に専門知識がないことを想定して作られている。
初めてのプレイヤーでも、最初からある程度形になった水族館を作れるのは『メガクアリウム』の長所だ。
思い出したときにプレイしたい
キャンペーンモードには10のシナリオがあり、同じシナリオでも進め方は自由だ。
一度クリアしたら、プレイの反省を生かしてさらに短い時間でのクリアを目指してもよし、大幅にレイアウトを変えて再挑戦することもできる。
連続でプレイしていると基本は同じことの繰り返しになるので、さすがに飽きが出てくることも事実だ。
しかし、時間が空くとプレイしたい気持ちが再燃してくる。本作は少しの間プレイしなかったからと言って、忘れてしまうような難しい操作を要求されるわけでない。
たまに引っ張り出してきて、無心でプレイするには最適のゲームだろう。
気がつくと数時間経ってしまう熱中度
ある日、私が『メガクアリウム』をプレイしはじめたのは夜7時。疲労感を感じてゲームを中断しようとした時には夜中の2時になっていた。
実に7時間も夢中でプレイしていたのだ。
好きなようにレイアウトできるがゆえに、細部にこだわってしまう。
私は来館者が水族館を自由に見て回れるように正方形や長方形でシンメトリーなレイアウトにしていたのだが、やはり順路を示したほうが見やすいのでは?と思い直し、作り直したら2時間経っていた。
もちろんそこまでこだわってアイテムを設置する必要はない。
しかし、投入したい生物にあわせて水槽の容積を変更したり、通路のスペースを2マスから3マスに変えたりと気になりだしたらキリがないのだ。
水槽の種類も豊富で壁面水槽などよく見るものからトンネル付きの水槽など、ちょっと珍しいものも設置できる。
このゾーンはトンネルゾーンにしよう。やはり壁面水槽で小さな生物を飼育しようか。でもインパクトが大切だろうから大きな角丸水槽にしようか。などと考えてしまう。
その結果、いつの間にか夢中になっているのだ。
私がレイアウトを変更したのには理由がある。
本作には《被観賞率》という数値があり、来館者に展示を見てもらわないことには各種ポイントがもらえない。
もちろんそこまで気にしなくても大きな問題はないのだが、自らの水族館で育てた生物には愛着がわくし、来館者に見て欲しいと思うのは必然だ。
生物は徐々に成長していく種類も多い。彼らの好みにあわせて水質装置を変えたり、植物が好きな生物のために水槽に草をセッティングする。
すると徐々に成長して、何日もかけて成体になるのだ。その過程を見れば愛着がわく。本作の生物成長システムはプレイヤーが水族館に愛情を注ぐための重要なファクターだ。
さらに一人称視点に切り替えて、自らレイアウトした水族館をじっくり見て回れるのも楽しい。
一人の来館者として館内を歩き、働いているスタッフや育てた生物たちを眺めるとそのかわいさに今までの苦労も吹き飛んでしまった。
かわいらしいグラフィックと集中を削がないBGM・SE
『メガクアリウム』で飼育できる生物のなかで、私が実際に見たことがあるものは少ない。
実物はどんな姿なんだろう?と思い、検索するとなかなか怖いフォルム。
リアリティを重視していたら、なかなかとっつきにくいだろう。本作ではそれぞれの生物をデフォルメすることで、かわいさを感じる造形になっている。
私は備品の造形も気に入っている。
自販機は普通の姿だが、フローズンヨーグルトサーバーやオレンジジューサーはかわいらしい。グッズのサメ帽子も憎めなくて好きだ(欲しいかどうか別として……)
来館者がサメ帽子を片手に歩いている姿も愛らしさを感じる。
BGMは印象に残るほどではないが、ポップなものが多いので、もう少しゆったりとした曲があれば、なおよかった。
水族館だけあって水槽からブクブク音が聞こえてくる。画面をアップにすると音が大きくなるような仕掛けが入れ込まれていた。
考える時間が多いシミュレーションゲームでは特徴的な音響効果よりも、思考を妨げないことが重要だ。
その点で『メガクアリウム』のBGMは成功といえる。
処理落ち・画面フリーズは気になる
どうしても触れなければならないのが、フリーズからのゲーム強制終了だ。
私の場合はキャンペーンモードを順々にクリアしていき《6.ハートクリフの研究所》あたりで発生するようになった。
それ以降、シナリオごとに1回は強制終了を経験した。
これにはパターンがあり、水族館をある程度の大きさまで拡大すると徐々に画面がカクつきはじめる(いわゆる処理落ち)遅延が大きくなってくると、突然操作が効かなくなり、強制終了する。
対策としては処理落ちがはじまった時点でセーブしておくしかない。
本作はゲーム内の1日ごとにオートセーブされるが、時間を止めてレイアウト変更しているときはゲーム内の日にちが進まないので気をつけた方がよい。
処理落ち時はゲームスピードを通常にするとなんとか持ちこたえている感がある。
多くのプレイヤーは水族館の規模を拡大するはずで、それに伴ってフリーズしてしまうのは厳しい。
オートセーブのおかげでやり直す工程はそこまで大きくなかったが、オートセーブとフリーズタイミングが悪ければセーブデータを破損してしまう可能性もあるだろう。
兎にも角にもこまめなセーブをおすすめする。
総合評価
総評:良い
3.5/5
『メガクアリウム』は水族館経営シミュレーションゲームというニッチなジャンルでありながら、デフォルメされたグラフィックとかんたんな操作でカジュアルな作品を完成させた。
生物の成長を見守ったり、館内を歩くことで、自らが作り上げた水族館に愛着を感じるだろう。
その一方で水族館を拡張すればするほど処理落ちとフリーズに悩まされることもあり、手放しで称賛するのは難しい。
しかし、あえてニッチな要素に飛び込んだ姿勢とレイアウトの楽しさはシミュレーションゲーム好きがプレイする理由としては充分だろう。
- ニッチな水族館経営シミュレーション
- かんたんな操作性
- 熱中するレイアウト作り
- 水族館を拡大すると起きる処理落ち・フリーズ
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