2020年2月にPS4版『Frostpunk』が発売された。
極寒の土地に都市を構築し生き抜くゲームだが、難易度が高く、初見でクリアするのは難しい。
何度もプレイするうちに経験が蓄積され、徐々にクリアできるようになってくる。
私は熱中してしまい、気がつくと夜通しプレイした日が何日も続いた。
この記事では『Frostpunk』をプレーした感想を書いていく。
単なる箱庭建築系ゲームではない

『Frostpunk』のジャンルは「都市運営 社会派 サバイバルシミュレーションゲーム」と表現されているが、正直その内容は分かりにくい。
他のシミュレーションゲームと比較するのであれば、
『シムシティー』『シティーズスカイライン』のように街を作って、勝手に人が増えていくわけでもなく、
『Age of Empires』『シヴィライゼーション』のように他勢力と戦うわけでもない。
人々を率いるリーダーがプレイヤーという面では、おふざけ要素のないサバイバル『トロピコ』が近いと思う。
『Frostpunk』には過酷な寒さのなかを生き抜くというメインミッションがあって、建築も都市運営も法律も生き抜くための手段の一つに過ぎない。
のんびり街作りをしていればあっという間に街から追放されてしまう。人々にとってはキレイな街を作るより暖が取れることが生き抜くための最優先事項なのだ。
単なる街作り箱庭建築系ゲームを期待していると肩透かしを食うだろう。
クセになる死にゲー

プレイを始めてから、何度も行き詰まった。
人々には「不満」と「希望」のゲージがあり、「不満」がMAXになったり「希望」がゼロになると、警告されたのち、数日中に改善できなければプレイヤーは街から追放される。
ちなみに私は初回プレイ時、9日で追放されてしまった。
極寒の世界では一瞬の判断ミスが命取りになる。
例えばジェネレーター起動のために石炭を集めたいと思ったら、
- 人々に野外で石炭を集めさせると凍傷になる
- 凍傷を防ぐために収集所を建てたい
- 収集所を建てるためには木材が必要
- 人々に野外で木材を集めさせると凍傷になる
というように問題がループする。
この場合は、無理を承知で木材を集め収集所を建てるのが正解だが、とりあえず野外作業させればよいと思っていると後々病人の山を築くことになる。
- この日までにこれを建てる必要があるから、このぐらい資源を確保しておこう。
- これをさっさと研究しておかないと、この後にどうしようもなくなるぞ。
- スカウトはここに送れば資源が多く回収できる。
このように、どんどん知見が深まっていくことで、対策を立てられるだけの計画性が身についてくる。
シナリオをクリアする頃には、苦労した分、カタルシスも大きい。
凄惨な「法律」

『Frostpunk』のなかで印象深かったのが「法律」だ。
食事や医療面など、選択できる法律には後味の悪いものが多いが、悪法と知りつつ施行しないとシナリオをクリアできないものもある。
法律によっては、2つのうち、どちらかを選ぶともう片方は施行できなくなるものがあるので、慎重に選ばなければならない。
- 例えば、序盤に労働者が不足しているなかで児童労働を許可するか。
- 児童にはすべての作業をやらせるのか、安全なものだけにするか。
- 逆に児童を保護して、後で医療や技師の手伝いだけさせるのか。
近々では児童労働を許可したいが、街が成長したときには技師の手伝いをして欲しい。
今を取るか、将来を取るかを決断するのもリーダーの仕事だ。
信仰に関する法律も興味深いものだった。
最初は祈りの館を建てたり、信仰の機会と場所を提供するだけなのだが、法律ツリーを進んでいくうちに状況が変わってくる。
過度に監視を行い、意に沿わないものには罰を与えたり、《公の贖罪》として見せしめ処刑を行ったりと行き過ぎた場面も出てくる。
もちろん選ぶのはプレイヤーなのだから、そんな選択肢は排除して良い。
むしろ倫理的に考えれば、排除すべきだ。しかし、これらの支配の効果はすごい。「不満」ゲージが急激に減り、「希望」ゲージが上がるのだ。
信仰を盾にするルートの他に、プロパガンダ一直線のルートもある。
こちらを選ぶと、プロパガンダ放送を流して人々を強力にマインドコントロールしていくことになる。
私はこれらのシナリオは独裁者たちへの風刺だと感じた。
4つのシナリオと「エンドレスモード」

『Frostpunk』には4つのシナリオと「エンドレス」ゲームモードがある。
- 嵐を生き抜く『新しい家』
- 苗木を守り抜く『聖櫃』
- 続々とやってくる人々を救う『難民』
- 前任のリーダーに代わり街を再興する『ウインターホームの崩壊』
どのシナリオを選んでも厄介なイベントがあるが、その分やりがいはあった。
私が一番面白かったのはメインシナリオの『新しい家』だ。
嵐に耐えるという明確な目標があり、シンプルに生き抜くことだけに集中できる。
『Frostpunk』を思う存分楽しめる「エンドレスモード」もおもしろかった。
《忍耐》《平穏》の2種類から進む道を選び、マップも複数のなかから選べる。
過酷な《忍耐》を選んでサバイバルを楽しむも良し、《平穏》で箱庭建築を極めるも良し、プレイヤーが好きなようにゲームを進められる。
《平穏》を選んでも、14日に1度は嵐がくるので、のほほんと建築だけをやっていればいいわけではないのが『Frostpunk』らしい仕様だ。
エンドレスモードでは「庭園」など、建築できる物が増えていた。
スカウトもガンガン派遣して、《蒸気核》を確保できる。ただし、嵐が起きると周辺の状況がリセットされる(14日周期)
スカウトにはお宝をさがしてくる任務も追加されるので、コレクターなら思わず収集してしまうだろう。
時間の制限がない分、全ての要素を研究することもできるので、建築好きはシナリオモードではできなかった自らが考えた街が作れる。
おわりに
『Frostpunk』のリリース情報を見たとき、サバイバルメインの街運営シミュレーションゲームとは一体どういうものなのか、疑問だった。
実際にプレイしてみると、画面の中には厳しい状況下で懸命に生きる人々がいた。
リーダーとしての自分は人々を良い方向に導いているのだろうか。あのとき下した判断は間違っていなかったのか。悩むこともある。
たとえ悪に染まり、独裁者になったしても、人々が生きることこそが大切なのだと自分に言い聞かせることもある。
『Frostpunk』は、リーダーとしての責任と倫理について考えさせるゲームだと思う。
単調な街づくりゲームに飽きてきた人こそ、プレイする価値のあるゲームだ。

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このページで使用している『Frostpunk』のゲームキャプチャー画像はDMM GAMES / 11 BIT STUDIOの著作物です。転載、配布等は禁止いたします。画像への書き込みは筆者によるものです。